借地借家法 第26条 ― 法定更新

あなたは、思っているよりずっと強く守られています

「更新料を払え」という請求書が届いたとき。「更新に応じないなら出て行ってもらう」と言われたとき。 多くの方が、不安の中でこう考えます——「契約書に書いてあるのだから、従うしかないのではないか」と。

どうか、安心してください。法律は、あなたの側に立っています。

第一条

更新のために、あなたがすべきことは何一つありません(借家の場合)

この条は、建物を借りている場合(借家)の説明です。土地を借りている場合(借地)は、次の「第一条の二」をご覧ください。

借地借家法第26条のもとでは、行動を義務づけられているのは貸主だけです。

貸主が更新を拒みたければ、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、更新拒絶の通知をしなければなりません。 この期限を1日でも過ぎれば、契約は従前と同一の条件で更新されたとみなされます。 「みなす」とは、反論の余地を認めない、法律上もっとも強い言葉です。

しかも「言った」「送った」では通用しません。通知の到達と内容を証明する責任は、すべて貸主にあります。 口頭・電話・普通郵便では何も証明できず、書留でも「何かが届いた」ことまで。 内容と到達日の両方を証明できるのは、配達証明付き内容証明郵便だけ——これを期限内に正しく実行できる貸主は、ごくわずかです。

仮に期限内に適法な通知が届いたとしても、その通知には「正当事由」——貸主自身がその建物を必要とする切実な理由——がなければ無効です(第28条)。 そしてこの正当事由の存在も、証明するのは貸主です。「更新料を払わないから」は、正当事由にはなりません。

それでもあなたが住み続けたなら、貸主が遅滞なく異議を述べない限り、やはり更新は成立します(第26条2項)。その異議にもまた、正当事由が要求されます。

そして貸主がこの仕組みを契約書の特約で書き換えようとしても——第30条が、第26条から第29条までの規定に反する借主に不利な特約を無効とします。

期限の関門、到達立証の関門、正当事由の関門、異議の関門、特約禁止の関門。 この五重の構造を、貸主はすべて自らの負担で立証しながら突破しなければなりません。 あなたは、そのどれか一つでも貸主が失敗するのを、ただ待っていればいいのです。

「更新の時期ですので更新料をお願いします」——もしあなたの手元に届いたのがこの種の請求書だけで、 期限内の内容証明による更新拒絶通知がないのなら、あなたの契約はすでに法定更新が成立している可能性が高いのです。

第一条の二

土地を借りている場合(借地)も、住み続けていれば更新されます

借地の場合も、期間が満了したとき、土地の上に建物があり、借地人が土地を使い続けていれば、 地主が遅滞なく異議を述べない限り、契約は従前と同一の条件で更新されたものとみなされます(借地借家法第5条2項)。 借地人の側から更新を請求した場合も同じです(同条1項)。

地主の異議には「正当事由」が必要です。正当事由は、地主と借地人のそれぞれが土地の使用を必要とする事情を中心に、 それまでの経過や土地の利用状況、立退料の申出などを考えて判断されます(第6条)。

借家との大きな違いは2つです。1つは、借家のような「1年前から6ヶ月前まで」という通知の期限がないこと。 もう1つは、更新後の期間が法律で決まることです (平成4年8月以降に始まった借地は、最初の更新が20年、その後は10年。それより前に始まった借地は、旧借地法により、堅固な建物30年、その他の建物20年)。

平成4年7月以前に始まった借地の更新には、今も旧借地法(第4条・第6条)が適用されます。 借地人に不利な特約は、借地借家法第9条(旧借地法では第11条)により無効です。

第二条

2つの最高裁判決が示す分かれ目

「理屈はわかった。でも裁判になったら本当に勝てるのか」——その不安にも、確かな答えがあります。

最高裁 昭和57年4月15日判決(借家)は、更新料の約定は、特段の事情がない限り、当事者が合意して更新する場合(合意更新)に関するものであり、 法律の力で更新される法定更新には及ばないと判断しました。 契約書の更新料条項が法定更新に触れていなければ、法定更新の場合の更新料支払義務は、この判決により原則として否定されます。

「でも、平成23年に最高裁が更新料を有効と認めたと聞いた」という方もいるかもしれません。ここは正確に知っておく必要があります。 最高裁 平成23年7月15日判決(借家)の事案では、契約書に「法定更新であるか、合意更新であるかにかかわりなく」更新料を支払う旨が明記されていました。 最高裁は、この賃貸借が法定更新されたと認定したうえで、この条項は一義的かつ具体的に記載され高額に過ぎないから消費者契約法10条により無効とはいえず、 借地借家法30条にいう借主に不利な特約にもあたらないとして、法定更新の場面での更新料の支払いを命じました。

つまり2つの判決の関係は——更新料特約が法定更新を明記していなければ、昭和57年判決により法定更新には及ばない。明記していれば、平成23年判決により、一義的・具体的で高額に過ぎない限り法定更新にも及ぶ。 分かれ目は、あなたの契約書の更新料条項の文言です。まずは条項をご確認のうえ、判断に迷う場合はご相談ください。 なお、2つの判決はいずれも借家の事件です。借地の更新料は、条文も判例も借家とは異なりますので、ご相談ください。

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第三条

この保護には、80年の歴史があります

法定更新と正当事由の制度は、1941年(昭和16年)、出征した兵士の家族が留守中に住まいを失わないよう保護するために生まれました。 住まいの安定は個人の力だけでは守り切れない——だからこそ法律が守る。 この思想は、80年を超えた今日も、条文と最高裁判例の中で同じ強度で生き続けています。

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